WORLD MARKETING SUMMIT JAPAN 2014

SUMMARY REPORT

テーマ 2. イノベーションとマーケティング

ディーパック・ジェイン(INSEAD教授&ケロッグ経営大学院 元学長 現チュラロンコン大学(タイ)ビジネススクール 学長)
ユシン・ドゥムネルンチャンヴァニット(タイ・ダブルA 社長CEO)
根来龍之(早稲田大学ビジネススクール ディレクター・教授)

モデレーター
ドミニク・テュルパン (IMD学長)

パネル・ディスカッション

テュルパン: どの経営者たちもイノベーションと仰っていますが、実施するのは難しいことです。ネスレのネスプレッソは全く新しいイノベーションで、このようなビジネスの成功をほかのところでも実施しようとする動きがありますが、なかなか上手くいくものではありません。どうすれば確固としたビジネスモデルを構築できるのか、ヒントを頂けますでしょうか。

ジェイン: ひとつが成功しても、他で上手くいくとは限りません。私たちは、目標とする分野で重要なイノベーションかどうか自らに問う必要があります。ある解決策が、他の同じような問題を解決するとも限りません。それよりも、お客様のために何ができるのかを考える必要があります。マーケット・リサーチでも同じです。お客様のための仮説が必要です。そしてどうすれば、皆さんの生活が良くなるのか、いろいろと試みてその中の1つが上手くいくかもしれません。そしてそれがより大きなスケールの問題を解決できるかを考える必要があります。ネスカフェの新しいイノベーションを学びました。いろいろな企業が様々な新しい製品を持ち寄ってきますが、すべての製品が成功するわけではありません。だからといって、その努力を続けるべきではないと言っているのではありません。私がひとつ提言できるのは、エスノグラフィーや定性調査など、調査によってユーザーが、時間なのか、味なのか、使い勝手なのか、何を良いと思うのかを考えることです。そしてそれに合ったものを出す必要があります。最近ビッグデータという言葉をよく聞きますが、大学の教授としては、データにフォーカスする必要があると思います。そして、ビッグデータからは製品以外の様々なインサイトを得る事ができるのかを分析すべきです。また、成功するためにはどんなマトリックスが必要かを明確にする必要があります。

テュルパン: 今日のプレゼンの中で、5年間かかってようやく役員会を納得させる事ができたと仰っていましたが、どのような事が障害になり、どのようにして乗り越えたのでしょうか。お金をかけて、投資効果を上げていくために何をしたのでしょうか。

ユシン: コモディティ製品のブランディングは皆があまり考えたことがないので、なかなか理解してもらえません。アジア的な考え方は必要ですが、日本から受け継いだ事などは、なかなか理解されるのは難しいです。

根来: ビジネスモデルのイノベーションについて、成功を保証されていません。ただし、2つ考えられる事があります。一つは、真似をして改良できるということです。例えば大学という領域がありますが、他の業界を見渡すと、映画の業界、テレビの業界、これらのビジネスモデルを真似て改良することはできます。もう一つは、ある業界がもっている制約をいかに消していくかということです。例えば大学の場合、100万円くらいの授業料を2年間、4年間払い続ける必要があります。これはひとつの制約です。もし、単位数に合わせて授業料を払ってもらうとしたら、別の新しいビジネスモデルを創造したことになります。成功するかは分かりませんが、そのような可能性を考える事はできます。

テュルパン: 破壊的なイノベーションということでいくつか例がありました。私はスイスから来ましたがが、皆さん時計を持っていますか。なぜ、スマホがあるのに時計を持っているのでしょう。このように時計にもカメラにもなるものが出てきても、時計はまだ残っています。このようにイノベーションが共存できるケースもあります。

根来: いくつか成功例があります。例えばシチズン。もともとは部品メーカーでしたが、プラットフォームになりえました。このように腕時計の分野でも階層構造を考える事ができると思います。日本企業として、ある部品をプラットフォームにし、その部品をプラットフォームとして売るやり方もあります。

テュルパン: 以前、セイコーやシチズン等のメーカーが、スイスの時計メーカーを一時壊滅的な状態にしたことがあります。今朝のアーカー教授の話の中で、製品は機能、ブランドは機能プラス感情的なものが入ってくるとの話がありましたが、もう一つ、グローバル・リーダーは多様な変化を予測し、対応していくことが必要だという話がありました。

ジェイン: リーダーシップを教える事はできませんが、ほとんどのビジネススクールで、変化に対応するための、グローバル・イニシアチブ・マネジメントのコースを持っています。いろいろな環境に学生を置いて、どう対応するかを学んでもらうのです。例えば、インドの農村で洗濯機に衣服をいれるのではなく、ミルクをいれてバターにするという事、その方が上手くいくという素晴らしいアイデアを考えた人がいます。新製品が出た時、どのように使われるのか予測する事や、予測の重要性については簡単に教える事ができます。それはシナリオベースでいろいろと考えられます。学生をどのように成長させるかという点については、教師は指揮者であるべきだと思います。若い人たちは素晴らしいアイデアを持っています。それを雑音では無くて音楽にする事が教師の役割だと思います。どのように教えるかということはかなり難しく、かなりの忍耐と寛容性が必要です。そのような事をグローバルな環境に適応させて、INSEADなどでは、学生一つの国から10%以上来る事がないようにしています。そして国連のような環境の中で、それぞれのクラスでプロジェクトをやってもらいます。学生が多様な文化をもってアサインメントを行います。ある方向に向かいつつあるものの、柔軟性のあるコースにしようとしています。それをどのように構造化していくのかが今後の課題です。

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