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【WMSJ × KCJ】獲るマーケティングから育てるマーケティングへ

KCJ

獲るマーケティングから育てるマーケティングへ
株式会社いくしな総研 代表取締役 小林 幸輝

ケロッグ・クラブ・オブ・ジャパン(http://kelloggbiz.jp/club/

 

30年前、ケロッグに入って最初に読まされた論文が、セオドア・レビットの「マーケティング・マイオピア」であった。50年以上前に書かれたこの論文は、顧客視点で考える本格的なマーケティングの幕開けを象徴するものとして、今なお大きな光を放つ。

この論文には、「マイオピア」(近視眼)として、自らを輸送業でなく鉄道業と定義したがゆえに鉄道が衰退していった話が出てくる。しかして50年経った今、この話はもはや過去のことであろうか?否、マーケティングは今日再びマイオピアの亡霊に悩まされているのである。自社が提供する価値をどう定義するか、マーケティングは今一度この原点に立ち帰るべきではないだろうか。
日々の現場において、マーケティングに求められるのは、需要を発見し刺激し、最大限売上に取り込むことにある。しかし、このことが知らず知らずのうちにマイオピアを生んでいる。市場ニーズを刈り取ることに熱中するあまり、持続的成長の機会を逃しているのである。

最近、日本プロゴルフ協会会長の倉本昌弘氏がこんなことを書いていた。(8月15日 日経新聞夕刊) ゴルフ人口の減少について、米国のプロゴルフ協会との会談で出たのが、「われわれはゴルフビジネスに特化しすぎ、ゴルファーを増やすことがおろそかになっていた」という反省の弁であった。まさに「ゴルフビジネス」と近視眼的に定義したことで、既存のニーズの争奪戦に明け暮れ、市場の縮小を黙認し、成長機会を逸してきたのである。

「魚を与えるのでなく、魚の釣り方を教えよ」という格言がある。「一方的に求める消費者VS一方的に与える企業」、この図式が続く限り、どのような市場も持続的な成長は望めない。ニーズは気まぐれに移っていき、それを一生懸命予測し追いかけるのがマーケティングの主たるテーマとなる。こうなると、もう反射神経だけの勝負である。
むしろ今日必要なのは、「育てる」という中長期的な発想ではないか。より広い高次の顧客価値へと導いていく考え方である。あるニーズが満たされたときに、同レベルの他のニーズに移動するのをヨコに追い駆けるのでなく、マズローの「欲求5段階説」のごとく、一つ上の価値へとタテに動かせないであろうか。「魚を与える」だけのビジネスでは、魚に飽きれば顧客は他の食べ物へと移っていく。しかし「魚の釣り方を教える」ビジネスであれば、道具から船、保存・加工、コンサルティング、と様々な可能性が伸びてくる。

発想を転換しよう。ゴールドラッシュで一番儲けたのは、金を掘り当てた人ではなく、スコップを売った人とリーバイスのジーンズである。

小林 幸輝
株式会社いくしな総研
代表取締役 小林 幸輝